写真キャプション:夢を語る吉田田タカシさん(2023年1月12日、奈良県生駒市のまほうのだがしやチロル堂で)
インタビュー:トーキョーコーヒー代表 タカシさん
昨年6月に登校拒否の子を持つ親や、賛同する大人たちが集まり学び合う「トーキョーコーヒー(TKCF)」と呼ぶ活動が全国で始まった。「学校に行かない子どもたち」に関する「大人の無理解」をテーマに、大人たちが様々な活動を通して楽しみながら、子育てや教育への考え方について知識を深める場所だ。「トーキョーコーヒー」の活動をリードする吉田田タカシさんにお会いした。(文/写真 陶器浩平)
***
――トーキョーコーヒーを始めたきっかけは
名前の由来はSNSで、『「東京コーヒー」と「登校拒否」って似ているよねー』と配信したことから始まった。現在、学校を長期欠席する子どもたちは全国で約29万人。この中には病気などの様々な事情で通えない子どもも含まれているが、多くは登校拒否といわれる子どもたちだ。そして、その子どもたちに問題があるかのように語られている。さらに、どうしたら子どもたちが学校に戻れるのだろうか。学力の遅れをどのようにして取り戻すのだろうか、と考えられることが多い。でも、子どもの登校拒否が問題ではなく、大人たちの無理解の方が問題ではないかと感じたのが、新しい活動を決めたきっかけだ。
――大人の無理解とは
子どもたちが学校に通わない理由の一つとして、教育システムが時代に合っていないと考えている。教育システムは戦後から大きな変化がなく、現在も子どもたちを均一化していく教育を行っており、大量に暗記させ、テストで答えさせて点数が高いということがベースとなっている。ポケットにスマートフォンが入っている時代に、この先、この方法でいいのかという問題と、子どもたちが物事にはすべて正解があるかのような感覚に陥ってしまう問題がある。
――「均一化教育」ですね
義務教育であれば小学1年生から中学3年生までの9年間、高校3年生までだと12年間、学校だけでなく、塾や予備校などに通う場合が多い。この間、ひたすら問題を解くが、全て暗記の確認で、マルとバツに分かれてしまう。それは、「正しさ」というものが自分の中ではなくて外に存在し、それが植え付けられて大人になり、みんなで決定しないといけない時に、多数派に流れることにつながっている。大人になったら、どんな生き方をしようが、どんな仕事をしようが、どこに住もうが自由だ。しかし、自分の中でその答えがなく、大勢の人はどうしているのだろうか。どれが正解なのか。どういう生き方が正解なのか、という探し方をするようになってしまう。
──個性や特性、主体性も喪失してしまう
集団の異種形成の時に、多数派に流れるという考え方は危険だ、単に暗記という作業ではなく、個別最適な一人ひとりに寄り添った本当の意味での教育をする場所が必要ではないか。そんな想いから、25年前に、大阪を拠点にしてアートスクール「アトリエe.f.t.」を立ち上げた。このような考え方は昔から言われており、すでに実施している学校や様々な書籍も出版されているが、これらは線でも面でもなく、「点」でしかない。このため、一部の学校の評判が良くても、その学校まで引っ越さないといけない。これは、子どもたちの問題ではなく、日本の問題だと考えている。そして、今の子どもたちが大人になった時に、今の教育を行っていると、先進国として立ち行かない。日本の未来はないと思っている。AI(人工知能)に仕事を奪われるというが、現在はAIに奪われるような教育をしている。それではダメだと思い、「トーキョーコーヒー」の立ち上げを決めた。
――「トーキョーコーヒー」では、どのような活動をしていますか
「トーキョーコーヒー」のベースとなったのは、自身が保有する奈良県生駒市の家屋をリノベーションして、大人たちが癒されながら勉強する「MITERI」の活動だった。誰でも参加できる「MITERI」では、回数を重ねていくうちに参加者が増え、不登校の子どもを連れて行っていいですか、と尋ねる新しい参加者が現れた。「MITERI」は、大人の活動の場であり、子どものために行っている場所ではないので、子どもたちは放ったらかしの状態だが、続けていくうちに子どもの数も増えた。
──子どもたちに変化も出てくる
ある日、大人たちがご飯を食べている時に、子どもたちが泥まみれになっていたり、勝手に遊んでいたりする様子を見たとき、大人たちが楽しい場所を作ろうとしているところに、子どもにとっても「最高の状態」が生まれていると感じた。「最高の状態」とは、「何かをさせられる場所」ではなく、「あなたらしく居ていい」という状態。「MITERI」に初めて来たある子どもは、一日中だれとも目を合わさずにいた。子どもたちにとっては自由時間なので、一日中スマートフォンやゲームを楽しんだり、川で遊んでいたりしても、大人たちはそれぞれ活動しているので子どもへは何も言わなかった。すると、ある子どもは、「安心できる場所」とわかると能動的に動くようになり、回を重ねるごとに表情が解かれ、手伝いや子どもらしい悪戯もするようになった。5教科から学ばなくても、生きていく上で必要な学びは遊びの中にあり、子どもたちがひとつずつ何かを手に入れていく様子を見ていると、「これだ!」と思い、全国に活動拠点をつくることにした。トーキョーコーヒーの発祥となった「MITERI」は、現在「トーキョーコーヒー生駒1@MIITERI」として同様の活動をしている。
――これからの目標を教えてください
全国で「トーキョーコーヒー」を主宰する人たちを募り、全国500カ所の拠点づくりを目標にしている。子どもたちの大切な個性や肯定感を損なわないために、日本中の大人たちが教育への考え方を楽しみながら理解を深めるために、みんなで「トーキョーコーヒー」を始めていただければ、と思っている。
***
〈世界一やさしい革命〉
学校に行かないと決めた子どもたちの声にこそ耳を傾け、時代に合った本質的な教育とは何かを大人は議論しなければいけません。学校の先生や教育委員会や僕らもみんな同じく、子どもたちの幸せな未来を願う仲間!トーキョーコーヒーは、学校に行かない事を推奨するものではありません。むしろすべての子どもたちが安心して、ワクワクしながら学校に行けたら最高!その為には学校も進化しなければと思っています。親も先生も地域も、日本中の大人が一丸となって教育システムをアップデートさせたいと思っています。(ホームページから抜粋)
※詳細はトーキョーコーヒーのホームページで