「僕のお世話をしてくれている人」と言ってくれた。市民後見人、川村正子さんが初の市長表彰

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判断能力が不十分な人の財産管理などを代行する「成年後見制度」の担い手として、親族でも専門家でもない市民が担当する市民後見人。その「大阪モデル」が脚光を集めている。無報酬、月に3、4回の訪問、1人が1件だけ担当する「単独受任」という、きめ細やかな活動が特徴だ。昨秋には草分けの1人、川村正子さん(72)が、市民後見人として初めて「大阪市長感謝」の表彰を受けた。今春で発足して13年。活動の基盤が、一層強くなりそうだ。

川村さんが活動を始めたのは、2009(平成21)年5月。その前に、母親の介護を4年間続けていた。
「もし、ひとりぼっちで母のような状態になっている人がいるとしたら…
それが、市民後見人をめざしたきっかけだった。     

受任した被後見人は、グループホームで暮らす年齢的には少し上の男性。手足などに障害があり、車いすを利用していた。軽い認知症も出ていた。
週1回、訪問する。何も話してくれない。5分とたたずに帰る日が続いた。
(後見の活動、できるかな…)

泣きたくなるような日々。それでも通い、本人の生活をみた。気づきが出てきた。
(グループホームの間取りは、車いすの移動に不向き。どこか探さなければ…)
本人の通院に付き添い、その帰りに本人といっしょに特別養護老人ホームを回った。本人が「ここがいい」というホームが見つかり、受任して1年半後にようやく引っ越した。

「この人、僕のお世話をしてくれている人……」

本人は、周囲の人に川村さんをこう紹介した。名前は呼んでもらえない。でも、心の底から嬉しかった。後見人は、身体介護などは、「仕事」ではない。ある一線の中での活動なので、とても難しい面がある。
「そこはわきまえながら、活動します。私たち市民後見人は福祉のプロでも医療のプロでもない……。だから無報酬でいい」
本人のことを考えると自分がいつまでも元気でいなければと思う。川村さんは、4年前からスポーツジムに通っている。

ある日のこと。本人が「故郷のお墓に行ってみたい…」と話した。そこで、有償ヘルパーを手配して、日本海のまちにあるお墓へのお参りを3年間にわたって3回実現した。
10年余、後見人としてずっと見続けてきた。

その功績が認められて昨年10月30日に行われた大阪市社会福祉大会で、松井一郎市長から「大阪市長感謝」の表彰を受けた。
注目を集める大阪の市民後見人制度。民生委員の前身といわれる方面委員制度に続く、「大阪発の全国モデルに…」との声も高まっている。

川村さんは、「後見人の仲間や支援していただいたみなさまを代表しての栄誉です。これを機に、大阪モデルの市民後見が広がっていくことを願っています」と話した。