コロナ禍に伴う「新しい日常」で施設の減災対策はどうする? 社会福祉法人「ライフサポート協会」の訓練と備え

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コロナ禍に伴う「新しい日常」が始まるなか、大規模災害への備えは重要な課題だ。大阪に拠点を置く社会福祉法人「ライフサポート協会」(大阪市住吉区)は防災士の職員を配置し、減災対策に取り組む。福祉現場は、どんな備えが必要なのか。 
(文/写真 今西富幸)

「コロナ禍の状況下で大規模災害が発生すれば課題がより浮き彫りになり、ふだんの備えが試されます」
防災士でもある高齢事業部長の福留千佳さんは、こう警鐘を鳴らす。
ライフサポート協会は住吉区、住之江区などで特別養護老人ホーム、居宅介護、障がい者事業所、ケアホームなどを運営する。2015年から法人防災会議を発足。毎月高齢、障がい部門の主任級が集まり、災害発生を想定したさまざまな対策を討議している。

防災士の資格を持つ福留さん(左)と松岡さん

きっかけは、東日本大震災後の2014年から数回、社会福祉士の松岡由美さんが被災地の福祉施設をボランティアで訪れ、活動報告会を開いたこと。災害対応の重要性を法人全体で共有しようと防災会議を定例化することにした。
また、防災士の配置も計画し、福留さんと松岡さんが2017年に防災士の資格を取った。防災士とは日本防災士機構が認定する資格で、養成研修講座を受講して試験に合格し、救急救命講習を受ければ取得できる。2人は、防災・減災意識の向上を目指し、地域や組織内外の研修会の講師も務めている。

その防災活動の柱が、今後30年以内に起きるとされる南海トラフ地震を想定して年数回、施設ごとに開催する状況付与訓練だ。各職場のリスクを洗い出し、状況に合わせて職員が自分で考えて動ける力を育むのが狙い。
また、通常の避難所では困難をきたす高齢者や障害者らを受け入れる福祉避難所の開設も社会福祉法人の重要な役割だ。

ライフサポート法人では、災害時、デイサービスのフロアなどを福祉避難所にする計画で定期的に開設訓練を実施。松岡さんは「いまあるリスクはもともとあったものだし、これからもあり続ける。だから感染症も減災対策は欠かせません。災害復興支援はソーシャルワークそのもの」と指摘する。

減災とは災害発生を前提に被害を最少限にする考え方。

「ゼロリスクを求め過ぎると管理と制限だらけになる。目に見えない感染症は、不安と恐れを増大させ、排除や差別の意識も生み出す。だから人権意識を持ちながら、災害や感染症を正しく恐れることが大切だ」と松岡さん。

今回のコロナ対策では厚生労働省の事務連絡に基づいて行動指針を策定。
朝の検温や通勤・職場での注意事項を盛り込んだ「職員心得」を各施設や職場ごとに練り上げた。災害時用のグループLINEを組織内に開設し、感染者を出さないための情報共有を図っている。
また、施設間の助け合いも必要になる。同協会は西日本の約30の社会福祉法人と災害時の人的サポートや備蓄品の支援を行う「お助けネット」協定を締結。この協定に基づき、福留さんは2016年の熊本地震で復興支援活動に参加しており、「ふだんからのネットワークづくりも欠かせません」。今後、コロナ禍での災害を想定した状況付与訓練も行っていきたいという。