自然の中で子どもの自主性をのびのびと育む。幼保連携型認定こども園あまだのみやちどりこども園

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社会福祉法人晋栄福祉会は大阪府交野市の待機児童解消に向け、市から交野市立第1認定こども園「(通称)あまだのみや幼児園」の運営を移管され、2020年4月から「幼保連携型認定こども園あまだのみやちどりこども園」としてスタートした。来年度からは定員を拡大して新園舎での保育が始まる。人も園舎も心機一転。どんなこども園になるのだろうか。公立のこども園出身の新園長と職員にお話をうかがった。
(文:和田依子、写真:岩佐俊英)

公私連携で5年間の移行措置

同園の特長は何と言っても豊かな自然環境に恵まれていること。園周辺には広い境内を持つや交野市の名刹に続くハイキングコースがある。晋栄福祉会が運営する保育園の中でも自然に恵まれた抜群の環境だ。

園長に着任したのは川村ひと江さんだ。川村園長は短大卒業後から41年間、交野市の公立保育所で勤務し、あまだのみや幼児園では10年間の勤務経験がある。保育のプロとして職員からの信頼も厚く、明るく大らかな人柄の園長として親しまれている。

令和2年4月の着任当初、職員らは保護者の落ち着かない様子に戸惑ったという。交野市はどちらかというと保守的な土地柄。「のびのび自由な保育を期待していたのに、民間に変わると方針も変わるのではないか」と民営化に不安を感じる保護者が少なくなかったようだ。

「保護者の声を受けて、市はこれまでの保育を継承できるよう市立こども園で勤務経験のある人に職員になっていただけるよう努力しました。あまだのみやちどりこども園は移行期間の5年間、公私連携型のこども園です。そのため園がこれまでの方針を修正する場合は、三者協議(市、保護者、法人)で話し合って決めます」と川村園長は話している。

川村園長(左)と1歳児クラスの担任の小山さん。背景は天田神社の豊かな森

個性を大切に子どもの自主性を育む

公立から民間へ。当初は戸惑いもあったが、夏が過ぎるころには職員も保護者も新体制に慣れてきたという。
「今は気持ちも切り替わり、コロナ禍でも職員全員ワンチームで頑張ろうとまとまってきています」と川村園長。秋にはコロナ対策をしながら運動会や音楽会をクラス単位で時間と場所を分けて開催し、子どもたちの成長を多くの保護者に見てもらえる機会が作れた。
「今までのやり方を一度には変えられませんが、徐々に民間のいいところを取り入れています」

公立の時は主食(白米や食パンなどに限定)を園児が家庭から持参するきまりだったが、園が提供できるようになったのはその一例だ。今後は主食に栄養豊富な「季節のご飯」を提供する計画もあるという。

「基本的には自然の中で生き生きと体を使った保育を目指していますが、今は多様化している時代です。一人ひとりの個性を大切にし、友達同士で共感でき、自主性を持った子どもに育つような保育を目指しています」と川村園長は抱負を語った。

子ども達とおやつの時間を楽しむ小山さん

コロナが保育を見直すきっかけに

コロナ禍の保育ではどのような工夫があったのか。1歳児クラスの担任、小山ひとみさんにうかがった。小山さんは昨年度まで8年間、あまだのみや幼児園で非常勤保育教諭として勤め、今年度正職員として入職した。
「残ることを決めた理由の1つは、緑豊かな自然に囲まれたこの園が大好きだったから」と園を愛してやまない職員だ。

昨年は、子どもたちが分散できる「コーナー遊び(さまざまな遊びの内容のブースを設け、子ども自らがそれを選択し遊ぶ方式)」を取り入れたり、戸外遊びの機会を増やしたりしたという。マスクを着けての保育では「口を開けてのお手本を見せることが難しい中で、噛まずに飲み込む子どもへの対応に困りました」と明かした。

子どもへの表現力も磨かれた。口元が見えず言葉がわかりづらいため、ジェスチャーで理解を深め、オーバーリアクションで感情表現を。「抱っこ」などのアタッチメントができない状況でも、目元の表情を意識し、まなざしで「見守っているよ」というサインを出すと子どもが安心してくれた。
「マスクをしていても、オーバーリアクションをすると、子ども達に楽しさが伝わりました。表情豊かな言葉がけになるよう、自分自身が楽しみながら保育に取り組むよう心掛けています」

コロナ対応であえて離れて子どもを見守っていると、子ども同士の積極的な係わりが見られた。今までは子どもを膝に乗せ「〇〇ちゃん、これやってみよう!」などと職員が遊びを提供していたが、「関わりすぎだったのでは?」と自身の保育を見直すきっかけとなったという。
「子どもたちは自分で遊びを生み出す力をいっぱい持っています。友達と共感して笑い合ったり新しい遊びを見つけたり、時にはけんかもして成長するのかなと思いました」と小山さんはマスクの上の眼を細めた。

[jin-fusen2 text=”ワンチームで楽しい職場に!”] 春に完成する新園舎は川村園長の希望で、周りの景観に溶け込むシックな山小屋風の建物となった。来年度から定員を165人から210人に増員して受け入れる。経験豊富なベテラン職員が多く、保護者の育児相談への対応も期待できる。
ほのぼの笑顔が印象的な川村園長の好きな言葉は「ケ・セラ・セラ。なるようになるさ」。常にプラス思考で、さまざまな公立園から集まった職員を前に「ワンチームで頑張りましょう」と鼓舞する頼もしさもある。晋栄福祉会の新たなチームリーダーとして、明るく楽しい職場を作ってもらえそうだ。