関西エリアと東京都で特別養護老人ホームやケアハウス、保育園など14施設を運営する社会福祉法人「三養福祉会」(大阪府門真市)。昨年はコロナ禍の中11月に東京・杉並区で特別養護老人ホーム「プライムガーデンズ高円寺」をオープンした。高齢社会の切実なニーズに応え、質の高い介護をどう提供していくか。理事長の菅幹夫さんにうかがった。
(文/写真、赤坂志乃)
職員みんなの力で壁を乗り越える
昨年を振り返っていかがでしたか。
「新型コロナで施設運営は大変でしたが、幸い大過なく順調に進められました。ワクチン接種が可能になるまでは感染予防の地道な取り組みしかないと思います。市中感染が広がればどんなに気を付けていても職員やデーサービスの利用者さんから感染者が出てしまうことはあります。その時クラスターにならないようにどう対応するか。シミュレーションは各施設でしっかりやっていますから心配はしていません。一つの施設で物資や人材が不足しても、他の施設が連携してバックアップする応援体制が出来上がっています」
東京で初めてとなる「プライムガーデンズ高円寺」の手応えは?
「11月に無事オープンし、うまく軌道に乗るよう進めているところです。コロナ禍でどうなるかと思いましたが、待機されている方が70名近くおられたのでやらなければという使命感が強かったですね。今回、全室にパラマウントベッドの最新の見守り設備を導入し、ハード面でも入居者の安全確保をしています。
高円寺の滑り出しに当たっては、関西から大勢のベテラン職員や元気の良い若手が駆け付けました。私から行きなさいとは一言も言っていないのに、施設長会議など施設間の横のつながりで「高円寺の叶施設長が困っているなら応援に行きます」と手を挙げてくれたのはうれしかったですね。どこも余裕があるわけではないのですが。新しい施設の立ち上げはそこだけでやろうとしても無理で、法人みんなの力を借りなければだめなんです」
ボトムアップの気風を感じます。
「全施設長が情報共有するラインに参加していますが、私は特別なことがない限り口を挟まないんです。職員の発想は無限大です。自由に意見を言い合い、何か私が判断する必要があれば対応すればいい。5年前にアイパッドを導入し情報共有を始めたのも職員のアイデアでした。みんながやりたいことがあればやってみる。やってあかんかったら引き返せばいい。それが私の基本的な考え方です。
これから社会福祉施設として生き残っていくには職員の意見やアイデアが届くような施設、法人でないといけない。風通しが良くて、アイデアあればやってみよかという方が職員のモチベーションも上がるのでは」
福祉のイメージを変える
介護現場の課題は?
「いかに職員の離職率を下げるかです。高円寺では長く働いていただくために職員専用の本格的なスポーツジムを設け、休憩室には個室ブースをつくりました。休憩時間や仕事終わりにリフレッシュできると好評です。春には企業主導型保育所も開設します。働きやすい職場をつくれば自ずと介護の質は上りますし、福祉の現場は暗いというイメージを変えたい思いもあります。元気で明るい施設づくりをしたいですね」
介護の担い手を確保するには?
「3年前から外国人技能実習生を受け入れレベルアップを図ってきました。海外で募集をして実際に介護現場で働いてもらうまでには4年近くかかります。そこで2019年9月に三養福祉会が中心となって他法人と共に、外国人技能実習生の受け入れや在留資格・特定技能に関する職業紹介事業を行う協同組合「グローバルライフ」を設立。2020年6月に監理団体の許可を取得し、5年先10年先の人材確保ができる体制を整えました。今春には組合としてベトナムから14名の外国人技能実習生が入国する予定です。
昨年12月には社会福祉法人三養福祉会として特定技能外国人の支援業務を行う登録支援機関の許可を得ました。許可を得ている法人はまだ少なく、組合法人と協力しながら特定技能外国人としてモンゴル人12名、ミャンマー人3名の受け入れ準備を行っているところです」
今年はどんな年に?
「新型コロナという見えない敵と戦いながら、介護や保育のニーズに応えて頑張らないといけない。新しい施設を作るには3年かかりますから、東京では特養、大阪では保育園の開設に向けて動き始めたいと考えています。大阪の網島の郷も東京のプライムガーデンズ高円寺もそうですが、不思議と良い場所に呼ばれるようで、運には恵まれていると思います。
来年から社会福祉連携推進法人制度が施行され、法人連携が始まります。1法人1施設で運営しているところはコロナ禍で経営が難しくなっていますので、地域の介護を支えるために吸収合併する形も考えています。常にアンテナを張り、地域福祉のために迅速にフレキシブルに動きたい」